
政府の2012年度予算編成に向けた各省庁の概算要求が9月末までに出そろった。この時期、東京・霞が関の中央官庁には補助金や規制緩和の実現を求める団体が増えてくる。バイオエタノール製造事業への補助金をめぐっても、いつも同じ顔ぶれの3人がいる。北海道バイオエタノール(札幌市)の藤井俊幸常務、オエノンホールディングスの松本信一・苫小牧工場長、全国農業協同組合連合会(全農)の内海竜也・バイオマス資源開発室長だ。3人は7月以降、月2回、農林水産省バイオマス循環資源課を訪れ、口をそろえて訴えている。「今年度で終了する補助金の件ですが、来年度以降も継続してもらえませんか」
彼らが属する3つの企業・団体は、農水省から補助金を得てバイオエタノールの製造・販売に取り組んでいる。07年度に始まった国の「バイオ燃料地域利用モデル実証事業」の中核に位置付けられており、今年度は5年間の事業期間の最終年度にあたる。
07年4月に作られた事業概要の説明資料には、「事業終了後(5年後)には自立的に運営」と明記されている。「補助金を使って、5年間で経済的に自立した事業にして欲しいということ」(当時の農水省担当者)だった。そして、この5年間に3事業には合計150億円近くの国費がつぎ込まれた。ところが、3事業の現状を見ると、経済的自立とはほど遠い実態が浮かび上がる。
全農が旗を振って進める新潟県のバイオマス燃料の製造事業。県内の農家の休耕田に、割安な経費でつくれる多収穫米を作付けし、それを原料にバイオエタノールを生産している。エタノールはブレンド設備でガソリンと混合し、県内の「JA―SS」の給油所で「グリーンガソリン」の名称で販売。原料の製造から燃料販売までを一貫してこなす国内初の事業として注目を集めた。全農は補助金がなくても、12年度は事業を継続する方針だ。12年度のエタノール生産に使う多収穫米は、今年度に休耕田など300ヘクタールを使って栽培している。
ただ、事業が「自立的」な軌道に乗る見通しは立っていない。10年時点で、多収穫米1キログラムから製造できるバイオエタノールは0.5リットル程度。コメの生産コストは1キログラム100円弱かかるため、原料コストだけで1リットル200円近くになってしまう。農水省がガソリンと競争できる価格水準として目標に掲げる1リットル100円には遠く及ばない。そこで、補助金の期限切れを前に全農が強調しているのが「食料生産拠点としての田を守る意味合い」だ。バイオ燃料生産だけでなく、農業政策としての意義も訴え、支援の継続を求めている。
2011.10.03