大手もリチウムイオンのよさに気がついた!電池を小型化、「プリウスα」に載せたトヨタ ハイブリッド車はLiイオン時代に(3)

 

 ハイブリッド車(HEV)でリチウム(Li)イオン2次電池の採用が広がっている。従来のNi-MH(ニッケル・水素)2次電池よりも小型・軽量化できるうえ、電池の出力を高められるので動力性能の向上にもつながる。本連載の第1回ではホンダの事例、第2回(前回)は日産自動車の事例でLiイオン2次電池の使いこなしを見てきた。最終回の今回はトヨタ自動車が「プリウスα」でどのようにLiイオン2次電池を使ったかを解説する。

 トヨタは「プリウスα」で、電池の小型化を最も重視してLiイオン2次電池を採用した。

 プリウスαには5人乗り仕様と7人乗り仕様があり、5人乗り仕様は通常の「プリウス」と同様に、Ni-MH2次電池を後席後ろの荷室床下に搭載している。しかし、この場所に電池があると、7人乗りの3列目シートが置けない。このため、7人乗りでは運転席と助手席の間のセンターコンソール内に電池パックを置いた(図1)。この場所に必要な容量の電池を置こうとすると、Ni-MH2次電池では不可能だったという。

 

図1 7人乗り仕様の「プリウスα」の電池搭載位置  運転席と助手席の間に搭載されているセンターコンソールに内蔵している。
 

図1 7人乗り仕様の「プリウスα」の電池搭載位置  運転席と助手席の間に搭載されているセンターコンソールに内蔵している。

 

 「純粋なセル同士の比較では、質量、容積ともNi-MH2次電池の半分くらいになっているが、安全性を重視してケースなどに頑丈なものを使っているため、電池パック同士の比較では質量・体積で2割減くらいになる」(トヨタ自動車第2技術開発本部HV電池ユニット開発部新電池制御2グループの真野亮氏)。

 

Liイオン2次電池の電池パックは、角型セルを56個内蔵する(図2)。56個としたのは、5人乗り仕様のNi-MH2次電池と電圧をそろえるため。3.6V×56=201.6Vは、5人乗り仕様車のNi-MH2次電池の電池パックの電圧とまったく同じだ。ただし、電流容量はNi-MH2次電池の6.5Ahに対し、Liイオン2次電池は5Ahと小さいため、電池パックの電力容量も、1.31kWhに対し、1.0kWhと低くなっている。

 

図2 7人乗り仕様のプリウスαのLiイオン2次電池パック  角型セル28個を積層したスタックを上下2段に分けて搭載している。

図2 7人乗り仕様のプリウスαのLiイオン2次電池パック  角型セル28個を積層したスタックを上下2段に分けて搭載している。

 

■周辺回路もNi-MH2次電池と「共通」

 

 ホンダの「シビックハイブリッド」や日産の「フーガハイブリッド」と異なり、プリウスαでは、Ni-MH2次電池との互換性を重視し、Liイオン2次電池の出力特性を、動力性能の向上には生かしていない。加速性能などもNi-MH2次電池と同じになるように制御しているという。

 

 意外なのは、インバータのハードウエアなど、周辺回路もNi-MH2次電池と共通にしていることだ。このハードウエア自体はプリウスとも共通だという。本連載の第1回で、ホンダは新型シビックハイブリッドで、Liイオン電池の採用に当たってインバータなどの周辺回路の変更を迫られたことに触れた。これは推測になるが、現行プリウスの周辺回路は、将来のLiイオン2次電池への展開も考えて設計された可能性が高い。

 

 プリウスαに搭載されたLiイオン2次電池は、正極材にLiNiO2(ニッケル酸リチウム)を主成分とする、いわゆるNCA系〔Li(Ni-Co-Al)O2〕である(Coはコバルト、Alはアルミニウム)。LiNiO2はエネルギ密度の面では有利だが、熱安定性の面で課題があるのは、本連載の第1回で説明した通りだ。

 

この点はトヨタも認識しており、安全性の確保には力を注いでいる。具体的には正極に、高温になると電気抵抗が増す導電性樹脂であるポリマPTC(Positive Temperature Coefficient)層を、負極には耐熱性の高い「HRL(Heat Resistance Layer)」と呼ばれるセラミックス層を形成している(図3)。また、センサによるセルの状態監視も多重系にするなど「徹底的にやっている」(トヨタの真野氏)。

 

図3 プリウスαのLiイオン2次電池の構造  安全性を高めるため、ポリマPTC層や耐熱セラミックス層を設けている。
 

図3 プリウスαのLiイオン2次電池の構造  安全性を高めるため、ポリマPTC層や耐熱セラミックス層を設けている。

 

 Liイオン2次電池の生産は、トヨタとパナソニックの合弁会社であるプライムアースEVエナジー(PEVE)が担当し、トヨタの貞宝工場(愛知県豊田市)内のラインで製造している。このラインの生産能力は1カ月当たり車両1000台分なので、プリウスαの7人乗り仕様車はこれ以上の増産は難しいことになる。

 

 プリウスαは発売後1カ月の2011年6月12日時点で受注台数が5万2000台となっており、このうち3列シート車が1万7000台と、約3分の1を占める。月産1000台では納車に1年半近くかかる計算だ。ただ、トヨタとしてはLiイオン2次電池の初めての量産であるため、「徐々にステップアップしていきたい」(プリウスαの開発責任者で、現在はトヨタ製品企画本部主査の粥川宏氏)と、慎重に増産を進める構えだ。

 

 

 

 

トラックバック(0)

トラックバックURL: http://www.tatsumi-rp.co.jp/cmt/mt-tb.cgi/76

コメント投稿