発泡スチロールを薄く加工した「紙」を三角形に切り出し、先端にマッチ棒をのせる。やさしく前に押し出しながら手を離せば、ゆったり空中を漂い続ける。普通の紙ヒコーキとは違う。「ふしぎヒコーキ」と私は呼んでいる。誰でも簡単に、空気と重力で遊ぶ感覚が体験できる。
他にも、さおと糸で引っ張って自由に操作できる鳥型ヒコーキや、ドライヤーの風で回転させながら空中で静止する飛行物体、鳥のように羽ばたきながら滑空するヒコーキなど、バリエーションも遊び方も無数にある。私はこれらのふしぎヒコーキをイベントや課外学習などで子供たちに教えるインストラクターとして活動している。
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飛行機より飛行に興味
多くの紙ヒコーキ好きと同様、私も幼いころから飛行機が好きだった。ただ、飛行機そのものより、モノが飛んだり浮いたりする現象に興味を示す子供だったようで、空を飛ぶ鳥や昆虫、父が吸うたばこの煙などをいつまでも飽きずに眺めていたものだ。
東京の高校を卒業し、選んだ進路が運輸省航空局の養成機関。1970年に修了し、松本や羽田、成田、種子島、伊丹、さらには東京ヘリポートや航空保安大学校、航空局、北海道の中標津や南紀白浜など、全国の空港や施設に異動を繰り返した。
本格的に紙ヒコーキにのめりこんだのは、まだ建設中だった成田空港で洋上の国際線の航空機を相手に交信する仕事をしていたころ。科学雑誌の付録を何気なく手に取り、ものの見事にのめりこんだ。
当時は住む人も少なかったニュータウンの住宅で紙ヒコーキをいくつも作り、休日になると早朝から造成地などでいつまでも飛ばし続けていた。エンジン付きのラジコンも経験したが深入りはできなかった。やはり静かに空気と遊ぶ感覚が好きなのだ。
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植物の種子に敗北感
その後、滞空時間を競う国内外の大会で優勝や入賞を繰り返し、自宅の部屋は優勝カップやメダルでいっぱいになった。そんなころ、もう25年ほど前になるが、紙ヒコーキ仲間を介し、アルソミトラ・マクロカルパという東南アジア原産の植物の種子に出合った。
幅十数センチくらいのとても薄くて軽い種子で、紙ヒコーキ好きの間では滑空する種子「ザノニア」として知られた植物だ。ドイツでは飛行機の登場前後にこの種子を模した飛行機も製作された。空中で手を離せば、かすかな気流をとらえ、ゆっくり旋回しながらひらひら舞い続ける。上昇気流をとらえて種子を遠くまで飛ばすための、いわば自然が生み出した紙ヒコーキだ。その緻密さ、繊細さに比べれば、私がそれまで作ってきた紙ヒコーキなど不完全としか思えなかった。
この種子の形状を薄い和紙で再現してみたところ、それなりに長く空中を漂うが、もっと軽くて強い素材はないかと探し回った。東大阪の町工場を経営している紙ヒコーキ仲間の協力で、発泡スチロールを極限まで薄く加工した素材の製作に成功し、驚くほどよく飛ぶものができた。以来、多くのヒコーキでこの素材を使用している。
形状も様々に工夫し、毎日、何十種類と新作を生み出した。実際に鳥やチョウを生み出すイメージで、スケッチしたり、図面を引いたり。さおと糸で引っ張ると何十分でも空中を飛び続ける。ふしぎヒコーキと命名したのもこのころだ。
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イメージはあるが…
紙ヒコーキのイベントや学校、ワークショップなど紙ヒコーキを教える機会が増えた。定年退職までまだ何年もあったが、私は思い切って退職し、かつて慣れ親しんだ中標津に移り住み、ふしぎヒコーキに専念して今に至っている。
常に頭の中にはゆっくりといつまでも飛ぶイメージがあり、毎日のように新作を思いつく。実際に製作し、飛ばしてみるものの、やはり自然界の飛ぶ生き物たちにはかなわない。
チョウひとつとってみても、羽を広げたまま滑空したり、小さく羽ばたいたりと、実に様々な飛び方を見せてくれるが、これらを再現するのは不可能としか思えない。それでもいつか、本当のチョウのように軽くて強いチョウ型のヒコーキをたくさん作り、気流に乗せて空高く、海峡の向こうにまで飛ばしてみたい。(いいじま・みのる=ふしぎヒコーキ・インストラクター



日系i新聞の10月13日の『文化欄』で拝見して、とても興味を覚えました。弊社は塗料を扱いますので、満更屋根の仕事をなさる飯島さんと無縁でもないように思いました。
まだ動画は見ていないのですが、その発泡スチロールを極限まで薄く加工するのはどうしたらよいのでしょうか?
i-phoneを持っていますので、それで動画を見てみますが出来れば自分でつきって飛ばしてみたいと思っています。
メールでご指導いただければ、作ってみたいものです。
郵便番号-0115鹿児島市東開町3-7
牧迫塗料(株) 電話:099-221-1223